第10回日本肺高血圧・肺循環学会学術集会

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会長挨拶

第10回日本肺高血圧・肺循環学会学術集会
会長 田邉 信宏
千葉県済生会習志野病院 副院長
千葉大学大学院医学研究院
呼吸器内科学 特任教授

 このたび、第10回日本肺高血圧・肺循環学会学術集会を、2025年6月14日(土)から15日(日)の2日間、新宿の京王プラザホテルにおいて、副会長の田村雄一先生(国際医療福祉大学医学部循環器内科 教授)、川口鎮司先生(東京女子医科大学医学部内科学講座膠原病リウマチ内科学分野 臨床教授)、長岡鉄太郎先生(順天堂大学大学院医学研究科呼吸器内科学 准教授)、髙月晋一先生(東邦大学医療センター大森病院小児科 教授)、石田敬一先生(千葉県済生会習志野病院心臓血管外科 部長)とともに開催させていただくことになりました。呼吸器内科医として、学術集会を担当させていただくのは、第2回の北海道大学呼吸器内科 西村正治先生以来となります。その責任の重大さを感ずるとともに、大変名誉なことと、会員の皆様に深謝申し上げます。
 本学術集会のテーマは、「未来を拓く―アンメットニーズの克服へむけて」とさせていただきました。千葉大学呼吸器内科では、教室開講時より肺循環を主要研究テーマの1つとして掲げてきました。私が肺高血圧症の患者さんに初めて出会ったのは、1985年、研修医の時ですが、現在は特発性・遺伝性PAHという名称で呼ばれる原発性肺高血圧症(PPH)は、有効な治療薬もなく、若い女性が3年以内に亡くなってしまう難病でした。1998年に厚生労働省呼吸不全栗山班で、PPHおよび CTEPH(当時は特発性慢性血栓塞栓症 肺高血圧型)の診断基準が作成され、治療給付対象疾患となり、その後、日本循環器学会のガイドライン(1999-2000年)が刊行され、疾患に対する認識が向上しました。2016年に本学会が設立され、レジストリ研究、ゲノム医療研究、AMED研究連携、患者会との連携はじめ、多領域にわたる専門性の高い疾患の探究が可能になりました。厚労科研 難治性政策研究事業「難治性呼吸器疾患・肺高血圧症に関する調査研究」班との研究活動の成果としては、先のガイドラインをアップデートした「診療ガイドライン」を本学会発で刊行するに至ります。
 さて、肺血管拡張薬が治療の主体でしたが、2024年にFDAでソタテルセプトが認可され、近々日本でも使用可能となることが期待されます。一方、重症例は、静注薬に頼らざるを得ないのが現状で、患者さんへの制限は大きいといえます。今後、新規治療薬の開発とともに、本学会の特色でもある多領域の医師による連携、看護師、薬剤師、理学療法士、等コメディカルも加わった、チーム医療の推進が、患者さんのニーズに合わせた治療には必要と考えています。
 近年、PAH自体も初発年齢の高齢化がみられ、ことに呼吸器疾患を合併したPAHは、高齢男性に多く、喫煙歴があり、肺拡散能の低下を認める点が、従来のIPAHと大きく異なります。その予後は、肺血管拡張薬を使用しても1980年代のPPHと大差なく、不良です。3群PHの予後も不良なままです。原疾患の治療、そしてガス交換を悪化させない新規治療の開発が望まれます。CTEPHでは、手術およびBPAそして、肺血管拡張薬によって、予後の改善がみられるようになりました。また、DOACとワルファリンを比較したKABUKI試験の結果が日本から報告され、大変喜ばしいことではありますが、慢性化の予防の観点からみると、その進歩はあまり見られません。このようにPHには、まだまだ、アンメットニーズが多くみられ、基礎研究の推進、トランスレーショナルリサーチによるブレイクスルーが重要です。
 最後に、私は呼吸器内科医ですが、日本においては、循環器内科医がPAH治療に携わっていることが多く、呼吸器内科医の携わる割合は、海外に比較して少ないのが現状です。PHは、2群を除けば、肺の病気と言えると思います。間質性肺疾患に伴うPHに対するトレプロスチニル吸入療法が日本においても使用可能な見込みで、呼吸器内科医でPHに興味を持つ医師が増えることが期待されます。本学会でも多くの演題が登録されることを期待しています。バルセロナで開催された第7回肺高血圧症国際シンポジウムを踏まえて、さらにその未来を拓く、ご参会の皆様にとって充実した学術集会になることを心より願っております。

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